平成28年9月9日/福岡地方裁判所/平成26年(ワ)第3028号
平成28年9月9日/福岡地方裁判所/平成26年(ワ)第3028号
【ケース】
デイサービスセンターから離設し、キャベツ畑の中で凍死したケース。
【結論】
原告ら3人合計で2,870万円の損害賠償が認められています。
【サービス】
デイサービス(社会福祉法人)
【利用者】
76歳。女性。
要介護2。
認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲa(またはⅢb)
(日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが主に日中(夜間も)を中心に見られ、介護を必要とする状態)
【予見可能性と結果回避義務違反】
まず、徘徊の具体的な予見可能性があったと認定しています。
(理由)
① 利用者には認知症状の1つとして徘徊癖があった。
② 職員も利用者の徘徊癖を認識していた。
③ 具体的な状況として、利用者が椅子から立ち上がり、フロア内を歩行して、非常口へと向かった。
そこで、結果回避義務としては、
① 徘徊することのないよう人的・物的体制を整備する義務
② 利用者の動静を見守る義務
を認定しています。
そして、被告(事業者側)は、
利用者の動静を見守ることをしなかったから、
結果回避義務違反があると認定しています。
なお、人的・物的体制を整備する義務の違反はないとされました。
(理由)
① 28名の利用者に対し9名の職員は不十分ではない(人的体制)
② 昼休憩で5名の職員のみでも一時的だから不適切ではない(人的体制)
③ 非常口に音がなる器具を設置していなかったとしても見守りで防げるから不適切ではない(物的体制)
【主な言い分】
被告(事業者側)は、言い分として、以下のことを主張しました。
(言い分)
本人は他人への意思伝達能力があり、助けを求めようとすればできた。
しかし、裁判所は、被告(事業者側)の言い分を認めませんでした。
(理由)
認知症による見当識障害により適切に対応できない。
【教訓】
利用者に徘徊癖があって、被告(事業者側)もそれを認識していたのであれば、利用者の動静を見守っていなければいけなかったですね。
お昼時に人手が足りず、見守りが難しくなるのであれば、一時的に非常口を施錠するとか、非常口にも人の出入りにより音が鳴る器具を設置するとかの方法があったかもしれません。
本件で、裁判所は、NHKの認知症行方不明者1万人(平成24年)という調査結果を引用したりしています。
認知症による徘徊・離設、行方不明は社会問題化しているのだから、被告(事業者側)に課せられた義務は重いんですよ、というメッセージとも読み取れます。