平成24年10月30日/東京地方裁判所/平成23年(ワ)第5183号

平成24年10月30日/東京地方裁判所/平成23年(ワ)第5183号
自保ジャーナル1896号167頁

→ 判決全文と弁護士原口圭介のコメント(PDF)

【ケース】

訪問介護サービスの利用者が臀部の褥瘡及び感染症に罹患して、担当ヘルパーと担当ケアマネの責任が追及されたケース。

【結論】

原告(利用者側)の請求は認められませんでした。

【サービス】

訪問介護、居宅介護支援(株式会社)

【利用者】

81歳。女性。
要介護3。
意思伝達能力に問題なし。

【予見可能性と結果回避義務違反】

まず、そもそもヘルパーには褥瘡を常にチェックする契約上の義務がないと認定しています。

(理由)
① ヘルパーの仕事は身体介護と生活支援

② 褥瘡のチェックは訪問看護の仕事

③ H21.10.15の時点で左大腿部の褥瘡(本件褥瘡ではない)を発見して医師の診察を勧めてもいるから、安全配慮義務違反付随義務違反)もない。

また、そもそもケアマネには褥瘡を予防する契約上の義務がないと認定しています。

(理由)
① ケアマネの仕事は居宅サービス計画の作成の支援とサービス提供事業者との連絡調整

② 褥瘡の予防は訪問看護の仕事

③ H21.10.15の時点で左大腿部の褥瘡(本件褥瘡ではない)の報告を受けて医師の診察を勧めてもいるから、安全配慮義務違反付随義務違反)もない。

【主な言い分】

Ⅰ 原告(利用者側)は、言い分として、以下のことを主張しました。

(言い分)
① ヘルパーのテキストには体位変換におけるポイントとして、褥瘡の観察がある。

② 文献には入浴介助におけるポイントとして、褥瘡の観察がある。

しかし、裁判所は、原告(利用者側)の言い分を認めませんでした。

(理由)
① 体位変換の話しではない。

② 入浴介助における褥瘡の観察が望ましいとしても、法的な義務ではない。

Ⅱ また、原告(利用者側)は、言い分として、以下のことを主張しました。

(言い分)
ケアマネは利用者が褥瘡になりやすいことを知っていたから、褥瘡を予防すべき義務がある。

しかし、裁判所は、原告(利用者側)の言い分を認めませんでした。

(理由)
ケアマネにそのような法的な義務まではない。

【教訓】

褥瘡について、担当ヘルパー担当ケアマネの責任を否定した重要な判例です。

介護職それぞれの仕事の内容・区分に着目して、褥瘡については訪問看護の仕事であり、ヘルパーやケアマネの責任を追及するのは筋ちがいという判断をしています。

妥当な判断だと思います。

もっとも、褥瘡について、ヘルパーやケアマネはまったく責任を負わないわけではありません。

ヘルパーやケアマネも利用者の身体の状況を気づかい、気づいたことがあれば、適切に対応する義務(安全配慮義務)は負っています。

本件では、担当ヘルパーと担当ケアマネは、褥瘡に気づいたあと、利用者本人に、医者にみてもらうよう勧めています。

このような対応も適切だったと思います。