平成24年3月23日/横浜地方裁判所/平成19年(ワ)第1585号

平成24年3月23日/横浜地方裁判所/平成19年(ワ)第1585号
判例時報2160号51頁

→ 判決全文と弁護士原口圭介のコメント(PDF)

【ケース】

施設に入所中、褥瘡が悪化し、敗血症により死亡したケース。

【結論】

原告(利用者側)らに対し合計2,160万円の損害賠償が認められています。

【サービス】

介護付き有料老人ホーム(ショートステイ)(株式会社)

【利用者】

87歳。男性。
要介護4。
入所前から仙骨部に褥瘡あり。

【予見可能性と結果回避義務違反】

まず、褥瘡が悪化することの具体的な予見可能性があったと認定しています。

(理由)
① 利用者の状況
  ・87歳
  ・自発的な体位変換ができない
  ・糖尿病(褥瘡が治りにくい)

② 入居にあたって褥瘡についての診療情報提供及び看護情報提供を受けていた。

そこで、結果回避義務としては、

① 2時間ごとの体位変換による除圧
② 患部の洗浄等による清潔の保持
③ その他の適切な褥瘡管理
を行い、
本件褥瘡を悪化させないよう注意すべき義務

を認定しています。

そして、被告(事業者側)は、

② 清潔の保持
③ その他の適切な褥瘡管理
を行わなかったから、

結果回避義務違反があると認定しています。

もっとも、具体的にどこがダメだったと言っているのかが読み取りにくいですね。

H18.1.14(亡くなる7日前)の時点で、褥瘡が拡大していたのに、被覆材デュオアクティブを5㎝×5㎝から10㎝×10㎝に変更して、デュオアクティブを使用し続けたこと

ということだと思います。

【教訓】

本件では、
H18.1.8の時点では、褥瘡は悪化していなかったところ、

H18.1.14(亡くなる7日前)の時点で、褥瘡が拡大していたのに、看護師が、被覆材デュオアクティブを5㎝×5㎝から10㎝×10㎝に変更して、デュオアクティブを使用し続けたこと

義務違反とされました。

たしかに、褥瘡が拡大していたのであれば、デュオアクティブの使用方法にしたがって、デュオアクティブの使用をやめすぐに医師の診察を受けさせるべきだったといえるでしょう。

もっとも、本件では、年末年始のため、そもそも医師の診察が、年始はH18.1.16と予定されていたんですね。

そして、年末年始における家族の負担を軽減するという目的のために、そもそも身体リスクの高い利用者をショートステイで受け入れていたんですね。

だからといって、介護福祉事業者としての責任を免れるわけではありませんが、被告(事業者側)の気持ちも理解できるところがありますね。

このような事情(87歳という高齢で、入所前から褥瘡があり、褥瘡が治りにくい糖尿病をかかえ、3か月前にも感染症で敗血症の寸前までいっていた利用者を、年末年始における家族の負担軽減のために、あえて受け入れた)を考慮して、裁判所は、死亡慰謝料の額を1,200万円とし、相場(2,000万円)よりやや低く認定していますね。

この裁判所の判断は、実情に配慮した妥当なものだと思います。