平成26年2月3日/東京地方裁判所/平成24年(ワ)第19503号

平成26年2月3日/東京地方裁判所/平成24年(ワ)第19503号
判例時報2222号69頁

→ 判決全文と弁護士原口圭介のコメント(PDF)

【ケース】

有料老人ホームに入居した利用者が褥瘡を発症して、入院後に死亡したケース。

【結論】

原告(利用者側)の請求は認められませんでした。

【サービス】

有料老人ホーム(株式会社)

【利用者】

92歳。女性。

【予見可能性と結果回避義務違反】

まず、異常を認めた際、専門医に受診させる義務についての違反(結果回避義務違反)は認められないとしています。

(理由)
H22.10.29褥瘡発症→H22.11.5皮膚科受診は普通の流れ

つぎに、
① 2時間おきに体位交換する義務

② 2時間おきにオムツ交換して患部の清潔を保持する義務

③ 栄養状態を把握し維持改善する義務

④ 臀部を観察する義務

についての違反(結果回避義務違反)も認められないとしています。

(理由)
① 2時間おきかは別にして適時に体位交換している。

② 2時間おきかは別にして適時にオムツ交換している。

③ 適宜に栄養状態を把握し維持改善している。

④ 臀部を観察したからこそ褥瘡がわかった。

【教訓】

本件では、褥瘡が分かったのが、H22.9.29だったか、1か月違いのH22.10.29だったかが争いになりましたが、証拠からは、H22.10.29と認定されました。

そのため、被告(事業者側)が、専門医に受診させた時期については、特に問題なかったと判断され、さらに、体位交換の頻度などについても、特に問題なかったと判断されました。

比較的、簡単に、原告(利用者側)の請求が排斥された印象です。

原告代理人も、そのことは予想がついたのではないかと思いますが、残された相続人の被害感情が強かった、などの事情もあったのかもしれません。

そうだとすると、介護福祉事業者としては、どうすれば相続人の被害感情をやわらげ、訴訟にしないことができたたのかが、考えるべきポイントになってくると思います。