令和元年5月31日/京都都地方裁判所/平成28年(ワ)第3590号
令和元年5月31日/京都都地方裁判所/判決/平成28年(ワ)3590号
【ケース】
施設内を歩行中、短期間で3回転倒して死亡したケース。
【結論】
2817万7240円の損害賠償が認められました。
【サービス】
介護老人保健施設(老健) (医療法人)
【利用者】
82歳。男性。
要介護3。
障害高齢者日常生活自立度(寝たきり度)A2。
認知症高齢者日常生活自立度Ⅳ。
【予見可能性と結果回避義務違反】
① 第1転倒
認知症だから転倒について一般的な予見可能性はあったが、歩行は安定していたから具体的な予見可能性はなかったとしています。
そこで、結果回避義務としては、
「利用者を視野に入れておく義務」を認定しています。
そして、利用者を視野に入れていたから、結果回避義務違反はないと認定しています。
② 第2転倒
第1転倒でソファーに座る際のリスクを把握したから、転倒について具体的な予見可能性はあったと認定しています。
そこで、結果回避義務としては、
「付き添い、介助する義務」を認定しています。
そして、付き添い、介助していないから、結果回避義務違反があったと認定しています。
③ 第3転倒
まず、短期間の間に第1転倒・第2転倒があり、ヒヤリハット報告書もあった。
また、直前に職員が、利用者がパック入り牛乳を飲みながら歩行していることを確認していた。
よって、転倒について具体的な予見可能性があったと認定しています。
そこで、結果回避義務としては、
「付き添い、介助する義務」を認定しています。
そして、付き添い、介助していないから、結果回避義務違反があったと認定しています。
【ポイント】
① 予見可能性と結果回避義務のレベルが、第1転倒前、第2転倒前、第3転倒前と段階的に上がっていっています。
(例:第1転倒前「利用者を視野にいれておく義務」から第2転倒前「付き添い、介助する義務」へ)
② 職員の人数に限りがあるとしても、職員のだれかが作業をやめて付き添うことはできたのだから、被告(事業者側)の言い分は通らないとされました。
厳しい判断です。
③ 人的態勢が厳しいならば、そもそも受入れをしないこともできた。
また、リハビリをして自宅復帰を目指すという老健の性質にもはやそぐわないのならば、契約を解除することもできた。
よって、被告(事業者側)の言い分は通らないとされました。
厳しい判断です。
【教訓】
① 特に、第3転倒の際、職員が、利用者がパック入り牛乳を飲みながら歩行していたのを確認したのであれば、付き添い、介助すべきでした。
② 転倒リスクの高まった第2転倒の後、契約を解除することもありえたかもしれません。
③ 最初から、そもそも入所を断ることもありえたかもしれません。
受入れ先に困った利用者を親切心で受けいれたところ、逆に悪い結果になってしまった印象も受けました。