社会福祉法人のガバナンス
【ケース】
評議員の確保に苦労しています。
顧問弁護士を評議員に選任することはできますか。
結論として、顧問弁護士を評議員に選任することはできます。
平成28年の社会福祉法改正により、社会福祉法人の経営組織のガバナンスが強化されました。
そのうち、特に影響が大きいと考えられるのは、議決機関としての評議員会が必置とされたことです。
評議員会は、法人運営にかかる重要事項の議決機関として、理事の選任・解任、理事、監事の報酬の決定などを行うこととされました。
このような重要事項の決定を行う評議員ですが、ガバナンス強化のため、親族などの特殊関係者は、評議員にはなれないこととされました。
「法人の運営に必要な識見を有する者」というのが評議員の要件ですが、適任者を継続的に確保するのはなかなか難しいようです。
この点、厚生労働省は、顧問弁護士を評議員に選任することはできると明言しています。
ぜひ、顧問弁護士を評議員に選任することもご検討ください。
問 21 当該社会福祉法人の顧問弁護士、顧問税理士、顧問会計士は評議員となることはできるか。
「社会福祉法人制度改革の施行に向けた留意事項について」等に関する Q&A(平成28年6月20日(平成28年11月11日改訂)厚生労働省)
答
1.法人運営の基本的事項を決定する者と業務執行を行う者を分離する観点から、評議員が業務執行に該当する業務を行うことは適当でない。
2.このため、例えば、法人から委託を受けて記帳代行業務や税理士業務を行う顧問弁護士、 顧問税理士又は顧問会計士については、評議員に選任することは適当でない。
一方、法律面や経営面のアドバイスのみを行う契約となっている顧問弁護士、顧問税理士又は顧問会計士については、評議員に選任することは可能である。
【弁護士からみたポイント】
法改正により、社会福祉法人の経営組織のガバナンスが強化されたことは結構なことです。
もっとも、法改正により、いわゆる法人の乗っ取りのおそれが生じることになりました。
理事の選任・解任権が、評議員会の決議事項とされ、さらに、親族などの特殊関係者は評議員になれないとされたからです。
そうすると、法人にとっては、法人の理念や運営に理解のある人が評議員になるのが望ましいということになります。
この点、顧問弁護士は、常日頃から法人をサポートする立場にあり、法人の理念や運営に理解がありますので、評議員の適性はあると思われます。
もちろん、法律の専門家である弁護士が評議員になることで、理事への牽制は十分なものとなり、ガバナンス強化に役立ちます。
顧問弁護士を評議員として活用することも検討してみてはいかがでしょうか。