平成31年3月14日/津地方裁判所/平成29年(ワ)第127号
平成31年3月14日/津地方裁判所/平成29年(ワ)第127号
【ケース】
個室トイレに着座した後、担当職員が下用タオルを取りに行った間に、居室内で転倒し死亡したケース
【結論】
2428万5412円の損害賠償が認められました。
【サービス】
特養(ユニット型指定介護老人福祉施設)(社会福祉法人)
【利用者】
92歳。女性。
要介護4。
認知症。
【予見可能性と結果回避義務違反】
まず、転倒の具体的な予見可能性があったと認定されました。
理由:
① 歩行はできないが何かにつかまれば立ち上がることができた。
② 認知機能が低下していた。
③ 転倒リスクについて介護・看護サマリーが確認されていた。
そこで、結果回避義務としては、
「トイレの介助棒及びドアの取っ手につかまり便座に着座中という不安定な状態のまま、利用者を見守る者がいない状態にしないようにする」義務
を認定しています。
そして、利用者を見守る者がいない状態にしたから、結果回避義務違反があると認定しています。
【ポイント】
① 被告(事業者側)は、再現実験までして、目を離したのは18.58秒という短い間だから、予見可能性も結果回避義務違反もないと主張しました。
しかし、裁判所は、18.58秒は短いとも言えないから、被告(事業者側)の言い分は通らないとしました。
厳しい判断です。
② また、被告(事業者側)は、人員配置及び勤務体系から、下用タオルを切らさないようにすることや、応援を呼ぶことは不可能だから、結果回避義務違反はないと主張しました。
しかし、裁判所は、担当職員としては、トイレに連れてきた利用者をいったん転倒の心配のない場所に移動させるなどできたのだから、被告(事業者側)の言い分は通らないとしました。
厳しい判断です。
【教訓】
トイレに連れてきた利用者を、またいったん転倒の心配のない場所に移動させることは、忙しい現場の感覚からすると難しいのではないかとも思います。
しかし、裁判所は、人員配置や勤務体系は理由にならないと判断しています。
裁判所としても、利用者が死亡している以上、厳しい判断をせざるをえないところがあるように思います。