平成31年4月23日/大津地方裁判所/平成29年(ワ)第340号
平成31年4月23日/大津地方裁判所/平成29年(ワ)第340号
【ケース】
横座りによるトイレ介助中、トイレの便座から転倒して嚥下機能が低下し死亡したケース
【結論】
2520万8569円の損害賠償が認められました。
【サービス】
介護付き有料老人ホーム(株式会社)
【利用者】
91歳。女性。
【予見可能性と結果回避義務違反】
① 職員は利用者の筋力低下を認識していた
② 端座位になったときバランスを失することを認識していた
③ 正規の用法でない横座りによるトイレ介助が危険なことは便器の形状を見れば容易にわかる
よって、予見可能性があったと認定しています。
そこで、結果回避義務としては、
利用者を「正面向きに座らせて、横や前方の手すりを設置する義務」
を認定しています。
そして、被告(事業者側)は、正面向きに座らせて、横や前方の手すりを設置することなく、横座りによるトイレ介助をしたから、結果回避義務違反があったと認定しています。
【ポイント】
被告(事業者側)は、横座りの方が、
① ナースコールを押しやすい
② 横向きに座った後、正面を向くという動作が必要ない
③ 表皮剥離や出血を防げるので横すわりを原告(とその家族)も了解していた
よって、結果回避義務違反はないと反論しました。
しかし、裁判所は、
① ナースコールの位置は変えればよい
② 横向きに座った後、正面を向かせることは職員が補助すればできるし、横座りさせて放置するよりはるかに危険が小さい
③ 仮に表皮剥離や出血を防ぐための横座りを原告(とその家族)が了解していたとしても、事業者には危険のないサービスを提供する義務がある
よって、被告(事業者側)の言い分は通らないとしました。
【教訓】
横座りによるトイレ介助に実際上の便宜があったとしても、事前のリスクマネジメントとしては、正規の用法に従うべきであったと思います。